2010-02-07(Sun)
将棋漫画読破録
しおんの王
かとりまさる・原作/安藤慈朗・漫画
/単行本全8巻/アフタヌーンKC/講談社・刊
主人公の安岡紫音は、幼い時に両親を殺害され、その時のショックで口が
きけなくなっております。天涯孤独となった彼女を引き取ったのが隣人でも
あった、プロ棋士・安岡信次でした。
新たな両親はやさしく、子供も無かったので、「3月のライオン」の零君の
ような兄弟との確執も無く、健やかに成長します。そして将棋に夢中になり、
プロを目指すこととなります。
そして当然、ライバルが登場するわけですが、一人は女子高生棋士にして
お金持ちのお嬢さん「二階堂沙織」。ちなみに「3月のライオン」にも
「二海堂晴信」という主人公のライバルが登場しますが、どちらも金持ち
という設定ですが…私もお金持ちになりたい!以上、私情でした。
そしてもう一人、同じく女子高生棋士の「斉藤歩」。彼女は実は男でして、
性同一性障害とかではなく、事情があって、女になりすまし女流棋士に
なったと…
また登場人物の実在の棋士との関連性を見てみたいと思います。
まずは「羽仁真名人」。どうしても将棋と言うと、羽生善治名人をもじった
キャラを出さざるを得ない。しかし名前だけ、キャラクターは全然違います。
ちょっと悪っぽい、後に二階堂沙織女流初段とゴシップ記事にされるなど、
随分前に将棋界を騒がせた艶っぽい騒動がモチーフになったりもします。
他は特にいないのですが、ちょっと無理やり、斉藤歩くんの師匠、神園九段
は、昭和の名棋士・升田幸三を彷彿させます。長髪の風貌、常に着流し、
酒びたり、「鬼神」と異名をとる等々…ぞくぞくするキャラです。
歩くんが女装し、弟子入りするために訪ねた際は、1局の対局で男だと
見破ります。その時のセリフ「詰みを見つけた瞬間、目が男に戻ってたぜ」
は…しびれます。
この神園八段は、後に紫音の両親を殺した犯人を特定する際にも
過去の対局が鍵になるなど、随所で活躍する重要な登場人物です。
いよいよ物語の本題部分に触れていきたいと思います。
主人公の安岡紫音は、中学生で女流棋士となり、ライバルである二階堂沙織
斎藤歩とともに、諸先輩を凌ぐ活躍を見せていくわけですが、そんな時に、
棋士と女流棋士、さらにはプロとアマの垣根を越えたオープン棋戦の話が
持ち上がります。
主催するのは、デジタルフォンというIT企業ですが、この会社を代表して
小林という男性が出てくるのですが、何ともミステリアスな感じで、一応
将棋を会社の宣伝に利用しようとしているのかな?あるいは紫音の事件に
何か関わっているのかな?などと憶測させつつ、話は進行します。
で、この小林という男、そのデジタルフォンの社員なのか社長なのか
今イチ分からないのですが、この会社の人間はこの小林しか出てきません。
そしてこの小林は、将棋は素人という設定なので、将棋の専門的な事柄を
分かりやすく伝える役割も果たします。意外と重要なキャラです。
で、プロアマ男女混合の完全オープントーナメント(優勝賞金5千万円)は、
羽仁名人の弟で、企業買収を手がける会社の社長(どこかで聞いたような…)
羽仁悟の協力も得て、スタートいたします。
そしてこのトーナメントの進行とともに、事件の真相も徐々に明らかに
なっていくのでした。
さて、かくして優勝賞金5千万円、参加費の10万円を支払えば、
参加資格自由の大会「アマプロオープントーナメント」はスタート
いたします。主だった登場人物は全員出場するわけですが…。
主人公の紫音は、1回戦でアマ強豪らしき男性と対局、対戦相手が女流
であるのと若いことになめたような態度をしつつ指すシーンも交えつつ、
圧勝で2回戦へと進みます。
スポンサーでもある羽仁名人の弟、羽仁悟もプロ五段を破り2回戦へ。
二階堂沙織、斉藤歩、神園、安岡等々も順当に勝ち進んでいくなか、
1回戦で小学5年生の男の子がプロの九段を下すという波乱も描かれ
ます。これはネットで流行している戦法を、九段棋士の方が知らなかった
という事が敗因なのですが…この小学5年生は、2回戦で紫音と当たる
こととなりました。
この小学5年生・本間素生君はネット将棋で腕を磨いたという設定で、
里美香奈倉敷藤花を彷彿ともさせますが、ピュアな反面、大胆なところ
も見せるキャラクターです。
この本間君、劣勢に立ったところで、「紫音ちゃんを倒すおまじない」
とのたまい、おでこに指で「王」の字を書きます。これは、紫音に
両親の事件を思い出させるしぐさであり、紫音を大きく動揺させます。
しかし心の葛藤を経て、事件に目をそむけず、前へ進む決心をし、
本間君を破るのでありました。
この本間君は、おまじないの事で警察に事情聴取されますが、ネット
対戦の相手に教えられたというのみ…。彼自身は事件に関わりもなく、
事件の核心に迫るまでには至りませんでした。
魅力あるキャラクターでしたので、また出てきてほしいなあ、と思って
いますと…羽仁名人に弟子入りしたいとか言って、また出てきます。
ですが弟子入りは…残念ながら。
「アマプロオープントーナメント」はさらに進行いたします。
二階堂沙織は、2回戦で神園九段に勝ち、大金星をあげますが、羽仁名人に
敗れます。また、斉藤歩も安岡八段に、紫音も羽仁悟に敗れます。
この、いくら強いと言えども女流棋士が男性棋士に敗れる下りは、ある意味
リアルな表現なわけで…この壁を乗り越えていくという、この漫画のもう
一つの大きなテーマが見え隠れするわけであります。
という事で、そのテーマを描くにあたっては、3人ともこのまま敗退という
わけでなく、この敗戦で何かをつかみ、敗者復活戦を勝ち上がって、無事
本戦への出場を決めます。
本戦へは、他に安岡八段、羽仁兄弟、それから紫音の兄弟子で奨励会三段の
久谷などが出場することになります。
本戦トーナメントの組み合わせ抽選は、デジタルフォンの新商品の
宣伝も兼ねているという、まあ実際にもありそうなイベントが描かれる
あたり、リアルな感じがいたします。
さていよいよ本戦。紫音は1回戦で皮肉にも育ての父・安岡八段と
対局することとなります。このあたりで、同じく本戦出場を決めた
羽仁悟が不穏な動きを見せます。事件の真相について何か知っている
ようですが、色々、紫音にイジワルな事もするので、犯人か?という
疑惑を感じさせるわけであります。
将棋シーンの一方で、紫音の両親殺害事件に関する物語も重要な柱です
から、当然事件を解き明かしていくキャラクターもいるわけで、この役割を
担うのが横山刑事という定年を間近に控えた、ベテラン刑事です。
8年間この事件を追い続ける「執念の刑事」ですが、若い刑事とコンビ
を組み、事件関係者のもとへ何度も訪れ、対局場にも度々訪れます。
紫音を温かく見守りつつも、若い刑事には厳しい上司といった風情で、
なかなか味のあるキャラクターです。
で、当然、不穏な動きを見せる羽仁悟にも疑惑の目を向け、水面下での
横山刑事と羽仁悟の攻防が本戦対局の進行と並行し、繰り広げられるので
ありました。
そしてプロアマオープン本戦、1回戦で紫音は育ての父・安岡八段との
戦いに挑みます。苦戦の末、安岡八段が詰み筋に気付かないという展開で、
紫音は勝ちを拾います。
ところで、このプロアマオープンに優勝すると、奨励会員や女流棋士、
アマチュアは無条件で棋士四段、つまりプロになれるという規程が発表
されます。
これに一番奮起するのが、奨励会三段、紫音の兄弟子・久谷です。
しかし羽仁名人との対局中、形勢が有利になったところで動揺し、
その隙を見逃さない羽仁名人に敗れ去ります。
そしてトーナメントは進み、二階堂沙織や斉藤歩も敗退。
そして準決勝で紫音は羽仁悟と対局、アマチュアながらその強さは
本物、そして紫音の両親殺しの犯人か?という疑惑とともに局面は
進みます。
やがて横山刑事の奔走もあり、悟への疑惑は晴れます。では誰が?
というところで、紫音が悟を破ると同時に、妙にいい奴になる悟なの
でした。で、いよいよ決勝、紫音は羽仁名人との戦いに挑みます。
まあ、この対局が泥沼というか、何というか…結末いいですかね?
犯人は羽仁名人という事が判るんですが、対局中、それに気付き、
心折れそうになりながらも、さらなる境地へ達した紫音が勝利を収めます。
後味はまあ、読んだ方それぞれだとは思うんですが、殺害の理由等々が
まあ歪んだ愛情と言いますか…少々消化しづらい展開なので、逆にその後は
思いっきりハッピーエンドにしております。
斉藤歩は男に戻ってプロ棋士を目指し、どうやら紫音ともうまくいく
ようで…横山刑事は定年退職しますが、後輩の刑事が事件の解明にと
仕事を受け継いでいきます。羽仁悟も兄の罪と付き合っていく覚悟を
決め、前向きに生きていくようです。
そして紫音は勝ちはしたものの心の傷は大きく、休場していたのですが、
イケメン彼氏もできたし、どうやらプロ四段として新たなスタートを
きるようで…で、最後は声を発するという感動の結末になるわけです。
さて、紫音の両親を殺した犯人は、羽仁名人だったという衝撃の結末でしたが、
動機の表部分は、紫音の才能を見抜いた羽仁名人が紫音に将棋を本格的に
させようと勧めたが、両親がそれを断ったからという事でした。
しかし、そのもっと深い部分、将棋の強さを極めるという事は…紙一重と
言いますか、狂気に身を委ねるような境地を欲したと言いますか…
そしてこの漫画のクライマックスともなる、オープントーナメントの決勝、
紫音VS羽仁名人の対決となります。図らずも、羽仁名人の思い通り、将棋の
道へ進んだ紫音は、このトーナメント中にも急成長を遂げ、羽仁名人との
対局に臨むわけであります。
狂気を身にまとい強くなった羽仁名人、人間の本質・本音の部分をえぐる
ような舌戦も仕掛けて参ります。しかし、温かい両親・師匠の元で将棋を
学んだ紫音は、精神的に追い詰めながらも、羽仁名人の狂気を打ち破ります。
この対局、ちゃんと棋譜もあるんです。最終8巻の最後の方に収録されて
いますが、その精神面の闘いのあたりも表現されています。解説もあります
ので、この棋譜を並べてみるのも面白いかもしれません。
そしてもう一つ、この漫画での大きなテーマ、女性は棋士になれるのか?
紫音は、オープントーナメント優勝を飾り、見事、棋士四段の資格を得ました。
棋士というのは、男女分けているわけでなく、どちらでもなれ、実際に棋士に
なるべく、奨励会に在籍した人もいたわけですが、残念ながら四段までいった
人はいないという事です。ちなみに囲碁の段位は男女共通です。
現在も香川愛生女流1級が挑戦中ですが、果たして夢は果たせるのか?
この漫画のような大会があれば、面白いのですが、これを開催する方が大変
かもしれませんね。
かとりまさる・原作/安藤慈朗・漫画
/単行本全8巻/アフタヌーンKC/講談社・刊
主人公の安岡紫音は、幼い時に両親を殺害され、その時のショックで口が
きけなくなっております。天涯孤独となった彼女を引き取ったのが隣人でも
あった、プロ棋士・安岡信次でした。
新たな両親はやさしく、子供も無かったので、「3月のライオン」の零君の
ような兄弟との確執も無く、健やかに成長します。そして将棋に夢中になり、
プロを目指すこととなります。
そして当然、ライバルが登場するわけですが、一人は女子高生棋士にして
お金持ちのお嬢さん「二階堂沙織」。ちなみに「3月のライオン」にも
「二海堂晴信」という主人公のライバルが登場しますが、どちらも金持ち
という設定ですが…私もお金持ちになりたい!以上、私情でした。
そしてもう一人、同じく女子高生棋士の「斉藤歩」。彼女は実は男でして、
性同一性障害とかではなく、事情があって、女になりすまし女流棋士に
なったと…
また登場人物の実在の棋士との関連性を見てみたいと思います。
まずは「羽仁真名人」。どうしても将棋と言うと、羽生善治名人をもじった
キャラを出さざるを得ない。しかし名前だけ、キャラクターは全然違います。
ちょっと悪っぽい、後に二階堂沙織女流初段とゴシップ記事にされるなど、
随分前に将棋界を騒がせた艶っぽい騒動がモチーフになったりもします。
他は特にいないのですが、ちょっと無理やり、斉藤歩くんの師匠、神園九段
は、昭和の名棋士・升田幸三を彷彿させます。長髪の風貌、常に着流し、
酒びたり、「鬼神」と異名をとる等々…ぞくぞくするキャラです。
歩くんが女装し、弟子入りするために訪ねた際は、1局の対局で男だと
見破ります。その時のセリフ「詰みを見つけた瞬間、目が男に戻ってたぜ」
は…しびれます。
この神園八段は、後に紫音の両親を殺した犯人を特定する際にも
過去の対局が鍵になるなど、随所で活躍する重要な登場人物です。
いよいよ物語の本題部分に触れていきたいと思います。
主人公の安岡紫音は、中学生で女流棋士となり、ライバルである二階堂沙織
斎藤歩とともに、諸先輩を凌ぐ活躍を見せていくわけですが、そんな時に、
棋士と女流棋士、さらにはプロとアマの垣根を越えたオープン棋戦の話が
持ち上がります。
主催するのは、デジタルフォンというIT企業ですが、この会社を代表して
小林という男性が出てくるのですが、何ともミステリアスな感じで、一応
将棋を会社の宣伝に利用しようとしているのかな?あるいは紫音の事件に
何か関わっているのかな?などと憶測させつつ、話は進行します。
で、この小林という男、そのデジタルフォンの社員なのか社長なのか
今イチ分からないのですが、この会社の人間はこの小林しか出てきません。
そしてこの小林は、将棋は素人という設定なので、将棋の専門的な事柄を
分かりやすく伝える役割も果たします。意外と重要なキャラです。
で、プロアマ男女混合の完全オープントーナメント(優勝賞金5千万円)は、
羽仁名人の弟で、企業買収を手がける会社の社長(どこかで聞いたような…)
羽仁悟の協力も得て、スタートいたします。
そしてこのトーナメントの進行とともに、事件の真相も徐々に明らかに
なっていくのでした。
さて、かくして優勝賞金5千万円、参加費の10万円を支払えば、
参加資格自由の大会「アマプロオープントーナメント」はスタート
いたします。主だった登場人物は全員出場するわけですが…。
主人公の紫音は、1回戦でアマ強豪らしき男性と対局、対戦相手が女流
であるのと若いことになめたような態度をしつつ指すシーンも交えつつ、
圧勝で2回戦へと進みます。
スポンサーでもある羽仁名人の弟、羽仁悟もプロ五段を破り2回戦へ。
二階堂沙織、斉藤歩、神園、安岡等々も順当に勝ち進んでいくなか、
1回戦で小学5年生の男の子がプロの九段を下すという波乱も描かれ
ます。これはネットで流行している戦法を、九段棋士の方が知らなかった
という事が敗因なのですが…この小学5年生は、2回戦で紫音と当たる
こととなりました。
この小学5年生・本間素生君はネット将棋で腕を磨いたという設定で、
里美香奈倉敷藤花を彷彿ともさせますが、ピュアな反面、大胆なところ
も見せるキャラクターです。
この本間君、劣勢に立ったところで、「紫音ちゃんを倒すおまじない」
とのたまい、おでこに指で「王」の字を書きます。これは、紫音に
両親の事件を思い出させるしぐさであり、紫音を大きく動揺させます。
しかし心の葛藤を経て、事件に目をそむけず、前へ進む決心をし、
本間君を破るのでありました。
この本間君は、おまじないの事で警察に事情聴取されますが、ネット
対戦の相手に教えられたというのみ…。彼自身は事件に関わりもなく、
事件の核心に迫るまでには至りませんでした。
魅力あるキャラクターでしたので、また出てきてほしいなあ、と思って
いますと…羽仁名人に弟子入りしたいとか言って、また出てきます。
ですが弟子入りは…残念ながら。
「アマプロオープントーナメント」はさらに進行いたします。
二階堂沙織は、2回戦で神園九段に勝ち、大金星をあげますが、羽仁名人に
敗れます。また、斉藤歩も安岡八段に、紫音も羽仁悟に敗れます。
この、いくら強いと言えども女流棋士が男性棋士に敗れる下りは、ある意味
リアルな表現なわけで…この壁を乗り越えていくという、この漫画のもう
一つの大きなテーマが見え隠れするわけであります。
という事で、そのテーマを描くにあたっては、3人ともこのまま敗退という
わけでなく、この敗戦で何かをつかみ、敗者復活戦を勝ち上がって、無事
本戦への出場を決めます。
本戦へは、他に安岡八段、羽仁兄弟、それから紫音の兄弟子で奨励会三段の
久谷などが出場することになります。
本戦トーナメントの組み合わせ抽選は、デジタルフォンの新商品の
宣伝も兼ねているという、まあ実際にもありそうなイベントが描かれる
あたり、リアルな感じがいたします。
さていよいよ本戦。紫音は1回戦で皮肉にも育ての父・安岡八段と
対局することとなります。このあたりで、同じく本戦出場を決めた
羽仁悟が不穏な動きを見せます。事件の真相について何か知っている
ようですが、色々、紫音にイジワルな事もするので、犯人か?という
疑惑を感じさせるわけであります。
将棋シーンの一方で、紫音の両親殺害事件に関する物語も重要な柱です
から、当然事件を解き明かしていくキャラクターもいるわけで、この役割を
担うのが横山刑事という定年を間近に控えた、ベテラン刑事です。
8年間この事件を追い続ける「執念の刑事」ですが、若い刑事とコンビ
を組み、事件関係者のもとへ何度も訪れ、対局場にも度々訪れます。
紫音を温かく見守りつつも、若い刑事には厳しい上司といった風情で、
なかなか味のあるキャラクターです。
で、当然、不穏な動きを見せる羽仁悟にも疑惑の目を向け、水面下での
横山刑事と羽仁悟の攻防が本戦対局の進行と並行し、繰り広げられるので
ありました。
そしてプロアマオープン本戦、1回戦で紫音は育ての父・安岡八段との
戦いに挑みます。苦戦の末、安岡八段が詰み筋に気付かないという展開で、
紫音は勝ちを拾います。
ところで、このプロアマオープンに優勝すると、奨励会員や女流棋士、
アマチュアは無条件で棋士四段、つまりプロになれるという規程が発表
されます。
これに一番奮起するのが、奨励会三段、紫音の兄弟子・久谷です。
しかし羽仁名人との対局中、形勢が有利になったところで動揺し、
その隙を見逃さない羽仁名人に敗れ去ります。
そしてトーナメントは進み、二階堂沙織や斉藤歩も敗退。
そして準決勝で紫音は羽仁悟と対局、アマチュアながらその強さは
本物、そして紫音の両親殺しの犯人か?という疑惑とともに局面は
進みます。
やがて横山刑事の奔走もあり、悟への疑惑は晴れます。では誰が?
というところで、紫音が悟を破ると同時に、妙にいい奴になる悟なの
でした。で、いよいよ決勝、紫音は羽仁名人との戦いに挑みます。
まあ、この対局が泥沼というか、何というか…結末いいですかね?
犯人は羽仁名人という事が判るんですが、対局中、それに気付き、
心折れそうになりながらも、さらなる境地へ達した紫音が勝利を収めます。
後味はまあ、読んだ方それぞれだとは思うんですが、殺害の理由等々が
まあ歪んだ愛情と言いますか…少々消化しづらい展開なので、逆にその後は
思いっきりハッピーエンドにしております。
斉藤歩は男に戻ってプロ棋士を目指し、どうやら紫音ともうまくいく
ようで…横山刑事は定年退職しますが、後輩の刑事が事件の解明にと
仕事を受け継いでいきます。羽仁悟も兄の罪と付き合っていく覚悟を
決め、前向きに生きていくようです。
そして紫音は勝ちはしたものの心の傷は大きく、休場していたのですが、
イケメン彼氏もできたし、どうやらプロ四段として新たなスタートを
きるようで…で、最後は声を発するという感動の結末になるわけです。
さて、紫音の両親を殺した犯人は、羽仁名人だったという衝撃の結末でしたが、
動機の表部分は、紫音の才能を見抜いた羽仁名人が紫音に将棋を本格的に
させようと勧めたが、両親がそれを断ったからという事でした。
しかし、そのもっと深い部分、将棋の強さを極めるという事は…紙一重と
言いますか、狂気に身を委ねるような境地を欲したと言いますか…
そしてこの漫画のクライマックスともなる、オープントーナメントの決勝、
紫音VS羽仁名人の対決となります。図らずも、羽仁名人の思い通り、将棋の
道へ進んだ紫音は、このトーナメント中にも急成長を遂げ、羽仁名人との
対局に臨むわけであります。
狂気を身にまとい強くなった羽仁名人、人間の本質・本音の部分をえぐる
ような舌戦も仕掛けて参ります。しかし、温かい両親・師匠の元で将棋を
学んだ紫音は、精神的に追い詰めながらも、羽仁名人の狂気を打ち破ります。
この対局、ちゃんと棋譜もあるんです。最終8巻の最後の方に収録されて
いますが、その精神面の闘いのあたりも表現されています。解説もあります
ので、この棋譜を並べてみるのも面白いかもしれません。
そしてもう一つ、この漫画での大きなテーマ、女性は棋士になれるのか?
紫音は、オープントーナメント優勝を飾り、見事、棋士四段の資格を得ました。
棋士というのは、男女分けているわけでなく、どちらでもなれ、実際に棋士に
なるべく、奨励会に在籍した人もいたわけですが、残念ながら四段までいった
人はいないという事です。ちなみに囲碁の段位は男女共通です。
現在も香川愛生女流1級が挑戦中ですが、果たして夢は果たせるのか?
この漫画のような大会があれば、面白いのですが、これを開催する方が大変
かもしれませんね。






